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●モスコミュールを作れないバーテンダーは、いません。今では、味は別にして、居酒屋などでも、メニューにあるのが当たり前です。
では、モスコミュールを作れないバーテンダーとは?
●それは、私の事です。
「はあ???」
正確に言うと、
「作れるのに、作れない!と言っているバーテンダー」です。
私は、店で、カクテルの注文があっても、
「勉強不足で、作れません!」と受け答えしていた時期があります。
バーで働き始めたばかりなら、分かりますが、何カ月もたって・・・
●当然、お客様には、冷たい目で見られ、侮蔑の態度をとられ・・・
誰よりも美味しいカクテルを作る自信があるのに、「作れない!」と言わなければならない経験を、した事のある人は、もしかして、いないのでは?
バーテンダーとして、バーカウンターの中に入っていながら、知識・技術を披露してはいけない!何とも奇妙なルール。
その意味が、分かるでしょうか?
●私は、ご存知の方も多いと思いますが、この業界に、何十年もいて、すでに、小学生の頃に、ある程度、カクテルの作り方を覚えています。
もちろん、カクテルの味を覚えたのは、成人してからですが、作り方は、頭の中に、映像として、インプットされているわけです。
ですから、本格的にカクテルを学び始める段階で、すでに、ゼロから学ぶ人よりも、数段上の事を、学ぼうとしているレベルなわけです。
●店=バーテンダーによる味の違いを、深く追求してみたり、新たなコンセプトで、カクテルを改良してみたり、新しいシェーカーの振り方を研究してみたり・・・
●では、バーテンダーとして、そんな私の、弱点は、何でしょう?
それは・・・・・
当時の、自分は、気付いていませんが、やはり、弱点は、若気の至り。
●要するに、「天狗!」になってしまう事です。
そう!
自分の作るカクテルを、飲んで、ほめてほしいわけです。
さまざまな知識・技術を披露して、自慢したいわけです。
そうすると、どうなるか?
その若さで、凄い!となるわけで・・・
間違いなく、「天狗!!」になる性格でもあります。(笑)
●そこで、先代から出された命令が、「カクテルは作れない!と言え。」です。
当時は、意味が理解できてません。不平不満だらけです。 自分のアピールポイントを潰されたあげく、店では、連日、ボロボロに言われ・・・
情けなくて、店に行くのがイヤになってました。それでも、潰れなかったのは、負けず嫌いの性格でしょうね。
●おかげで、お客様が、何を求めていらっしゃるか?とか、どのように接客や会話をするべきか?とか、違うアプローチの方法で、お客様に満足して頂くための能力を磨くことにつながりました。
先代に、感謝です。
●ただ、もう、はるか昔に引退した先代に、先日、聞いたら・・
「そんな事を、言ったかな?記憶にないよ。」
かなりの高齢ですが、まだ、ボケてないはず。
もしかして、あの命令は、気まぐれ??十分に、ありうる性格です。
そんな私も、最近、先代に似てきたような??
●随分、話がそれましたが、要するに、お客様の視点で、カクテル作りを考えるようにならなければならないのです。
単なる職人では、ダメです。まず、人間性を鍛えろ!という事ですね。
●「モスコミュール」にしても、本物はこうだ!みたいな話があります。もちろん、知識としては、知っておくべきでしょう。
オリジナルのモスコミュール(開発当時のモスコミュールという意味で)は、ウォッカは、この銘柄、グラスは、これ!・・・いろいろあります。
全てのカクテルで言える事ですが、そのカクテルを作る時に、お客様視点で作る事が重要です。その視点を無視して、これが本物!という押し付けは、ナンセンスでしょう。
●もし、私が、若かりし頃、自分の知識・技術を自慢するバーテンダーとして、そのまま店を経営していたら、今、店が存続していたかどうか??
まあ、考え方は、人によって違いますので、あくまで、職人として経営するのが正統派!と、おっしゃる方もある事でしょう。
それは、それで、良いと思います。私は、別に、全ての方に、賛同を求めているわけではありません。さまざまな意見の方があって当然ですし、そうした方達も、受け入れることができます。
ここで、お話している事は、全て、私の場合は!という条件付きだということで、よろしくお願いいたします。